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官舎を想ひ出す
2006年 09月 28日

小学校の低学年だった私にとって 駅そばにある鉄道官舎へ遊びに行くのはチョッとした小旅行。
 仲良しだったその家の子は後に転校。 高校2年で再会するまで十年近くも空いたっけ。
タール塗られた茶色の壁板。
近くに寄ると木造電信柱と同じ油の匂い。
弧を描く木目は、ところどころで渦を巻き、時々ぽっかりと節穴を作っていた。
木目をなぞって、そのでこぼこの波に指先を沿わせ、穴の中へとすっぽりと指先を入れて。

たった一度だけれど官舎付属の共同浴場へ入ったことがある。
風呂とは日暮れて入るものだという思い込みがあった私には、
太陽の高いさ中に、鉄道男の誰一人入っていないその浴場は、異世界にも感じられた。
コンクリートに砂利タイルを埋めたのではない、流し床,そして浴槽。シャワーのない洗い場。
どこもかしこも板だらけ。
外壁も茶色く黒いタールの板で、ここに節があったらと、子供らしからぬ心配をして。


小学校への通学路。 少し回り道をすると営林署の官舎があった。
 普段の通学路は両翼を馬のいる小さな牧場に挟まれた、中央線も歩道もない道だった。
タールの匂いは乾いていた、そしてお洒落な香りも漂っていたと思う。
ほんの3ヶ月の子犬だったコリーを見つけ、可愛がって毎日のように回り道をした。
その子犬は、めきめきめきめき 大きくなって、あっという間に私たちよりも大人の貫禄を示した。
飼い主である獣医さんの奥さんは、時々お茶とお菓子をくれた。
よその犬に餌をあげてはいけないと諭されながら、餌をもらって喜んでいた。


JRが国鉄だった頃、NTTが電電公社だった頃、営林署がたくさんあった頃。
そして木造校舎の窓を寒風にさらされながら、みんな一斉に窓拭きをした頃。
タールを塗り込めた節穴すらある木造の官舎が、どこにでもあった。
まだテレビアンテナのない屋根と煙突が、けっこう多かった時代に。
by bucmacoto | 2006-09-28 23:55 | particle
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