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パンデミックに関する引用
2006年 05月 15日
writing begin: 2006.5/15
last edit: 2006.5/18
日経サイエンス2006.01 p24- より 前半のみ引用(図は割愛,誤字誤変換無確認)

1918年
H1N1の世界的流行で4000万人が死亡

1957年
H2N2の世界的流行で100万~400万人が死亡

1968年
H3N2の世界的流行で100万人が死亡

1997年
香港で鳥インフルエンザH5N1により18人が発病,6人死亡

1999年
香港でH9N2型に幼児2人が感染

2003年
H5N1がアジア8カ国に拡大,オランダで1000人がH7N7に感染

2004年1月
ベトナムとタイでH5N1のヒトへの感染確認
 9月
米国が200万人分のH5N1ワクチンを発注

2005年4月
アメリカ合衆国ブッシュ大統領がパンデミックウイルスに感染した人の隔離は妥当と認める
 6月
中国中部の青海湖でH5N1により6000羽の野鳥が死亡
 7月
ロシア・シベリアで家禽がH5N1に感染/カザフスタンでガチョウがH5N1に感染/インドネシア・ジャカルタで一家3人がH5N1で死亡
 8月
ベトナムで家禽2000万羽にH5N1ワクチンを接種/モンゴルでガチョウと白鳥がH5N1により死亡/ロシア・ウラル山脈の家禽に感染拡大
 9月
H5N1の感染は鳥では13カ国,ヒトでは4カ国で確認



新型インフルエンザ大流行に備える


感染性の高い鳥インフルエンザが人類を襲う日が必ずやってくる
影響を最小限に食い止めるため,世界が動き始めた

W.W.ギブズ/C.ソアレス(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)
 感染性の高いインフルエンザウイルスが人類を襲う日が必ずやってくる。数ヶ月以内に来襲するものか,何年も先のことになるか,何百万人もの命を奪うのか,数千人の犠牲で収まるのかはわからない,しかし,流行は確実にやってくる
 ハリケーンでニューオリンズの堤防が決壊したとき,米国民の政府への信頼も崩れ去った。 それまで人々は政府は自然災害から自分たちを守ってくれるものと信じていたからだ, 連邦政府の災害支援を指揮した国土安全保障省のチュートス長官(Michael Chertoff)は,ハリケーン 「カトリーナ」 とそれを引き起こした洪水を 「政府が予測できなかった超大惨事」 と述べた。
 しかし,カトリーナは予測できなかったわけではない。 連邦政府も,州および地元当局も,風速53m/秒という大型ハリケーンがニューオリンズを襲った場合に備えて対策を検討していた。 堤防も排水ポンプも一瞬にしてのみ込むほどの高潮が悪阻寄せ,冠水した市内に数千人が取り残されると言う状況を想定し,救援計画を立てていたのだ。 それどころか,2004年には演習まで実施している。 ところが, いざカトリーナがやってきたら,計画はまるで役に立たなかった。
 一向に進まない,連携を欠いたお粗末な対応を目の当たりにすると,暗澹たる気持ちになる。 もっと規模が大きく,もっと多くの人命を脅かすような自然災害が襲ってきたとき,世界の国々は対処できるのだろうか,科学者はそれがすぐにも起きるかもしれないといっている。 その自然災害とは,言うまでも泣くインフルエンザ尾の世界規模の大流行(パンデミック)のことだ。 パンデミックの脅威はカトリーナよりもはるかに不気味に思えるが,ハリケーンと共通する点もある。 インフルエンザもハリケーンも特定の季節に決まって急増するため,慣れが生じて,専門家たちが警告する"大きな災厄"についつい無頓着になり,準備がおろそかになってしまうのだ。
 パンデミックをもたらす深刻なインフルエンザを理解する上で最も重要なのは,この病気が,誰もがかかったことのあるインフルエンザとは似ても似つかぬものだということだ。 ただしこれらのウイルスは分子レベルでは似通っている。 パンデミックが発生するのは,インフルエンザウイルスの遺伝子が変異を起こして,私たちの免疫系には馴染みのない危険な存在になった場合に限られる。 このウイルスも,くしゃみや咳,接触によって,ヒトからヒトへと感染する。
 インフルエンザの大流行は数十年単位で前触れもなく発生する。 過去3回の大流行は,1918年,1957年,1968年に起きた。 パンデミックの始まりは野鳥や家禽の間で絶えず循環している多数のインフルエンザウィルスの1つがヒトにも感染しうる形に変化したときだ。 このウイルスがさらにヒトに対して順応を遂げる。 つまり,ヒトに感染するインフルエンザウイルスと遺伝子を交換して,ヒトの間で強い感染力を発揮する新型ウイルスを生み出すのだ。
 パンデミックといっても,軽くて済むものもあれば,激烈を極めるものもある。 免疫系が交代を産生すべく学習するよりもはるかに速いスピードでウイルスの複製が進めば,重篤な病を引き起こし,死に至ることもある。 エイズがこの四半世紀に奪ったよりも多くの人命をたった一年でたやすく奪うこともありうる。 公衆衛生の研究者は,次のパンデミックは地球上に住む人々の3人に一人を襲い,その多くを病院に送り込み,数千万を死に至らしめるだろうと警告し続けていた。
 科学者といえども,どのインフルエンザウイルス株がパンデミックを引き起こすのか,予測することはできない。 彼らにできるのは,パンデミックは必ずやってくる,と警告することだけだ。 しかもアジアの人々の命を奪った鳥インフルエンザの獰猛なウイルス株が鳥の翼を借りてヨーロッパめがけて猛進していることを考えれば,すでに危険は差し迫っていると。
 今のところ,鳥インフルエンザを引き起こすA型(H5N1)インフルエンザ株は,ヒトからヒトへと容易に伝染するほどの力は持っていない。 しかし着々と変化し続けており,このウイルスに感染した数種の野鳥が冬の渡りの季節を迎えている。
 切迫感が高まる中,政府と公衆衛生の専門家はパンデッミックに対する4大防衛線,「監視(サーベイランス)体制」「予防接種」「封じ込め対策」「治療の強化」に取り組んでいる。 多少の手抜かりはあっても,準備すればするだけ人類に及ぶ被害は小さくなるはずだ。 しかし,カトリーナの経験から,どうしても疑問を禁じえない。 人員の大半がインフルエンザに倒れた場合,はたして当局は計画通りに動くことができるのだろうか?

監視体制:パンデミックウイルスの正体とは?

 新型インフルエンザに対する第1のl防衛策はその来襲を予見することだ。 現在,3つの国際専門機関がH5N1型をはじめとするインフルエンザウイルス株を追跡するための世界規模の活動を調整している。 世界保健機関(WHO)は83ヵ国,110ヶ所のインフルエンザセンターと協力して,ヒトでの症例のサーベイランスを続けているし,国際獣疫事務局(OIE)と国連食糧農業機関(FAO)は鳥などの動物での感染拡大の報告を収集している。 しかし,こうした監視システムの管理者でさえ,この取り組みが穴だらけである上に,遅きに失したと認めているのだ。
 インフルエンザウイルスは多くの場合,飛沫感染すると考えられており,感染から発症までの時間が短いため,何よりもすばやい対応が求められる。 30日以内に封じ込めることができなければ,当局がパンデミックを初期段階で食い止められる見込みはないといってもいいだろう。 パンデミックを引き起こしうるウイルス株に感染したヒトが,ほかのヒトに移す感染力を持った瞬間,時計は運命の時を刻み始めるのだ。
 パンデミックをいち早くキャッチするには,感染が確認されるたびに,感染拡大の程度とウイルスの能力の変化を監視し続ける以外に手がない。 2005年4月,WHOはパンデミックに至るまでの状況を6段階に分類する新たな指針を発表した。 この指針では,感染拡大とういるぅの進化という2つの因子にもとづいて,世界がいまパンデミックサイクルのどの段階にあるかを判断している。
 これまでに確認されたN5H1ヒトインフルエンザ感染は個人個人の感染にとどまっているため,現在の段階は 「パンデミック期」(フェーズ6)から2段階隔たったフェーズ3の 「パンデミックアラート(警告)期」 にあるとしている。 鳥インフルエンザウイルスが人にも容易に感染するよう変化していないかどうか,その兆候を見逃すまいと,ウイルス学者たちは新たなH5N1感染症例のサンプルを確実に入手しようと努めている。
 インフルエンザウイルスの進化の方法は2通りある。 1つは遺伝子のランダム突然変異によってじわじわと変化していく方法,もう1つは,より手っ取り早く,動物やヒトの体内でウイルス同士が遺伝子の一部を交換する方法だ(右ページ下の囲み参照)。

パンデミックウイルスはこうして誕生する

H5N1をはじめとするA型鳥インフルエンザウイルス株がヒト細胞表面のシアル酸に結合すると,2通りの方法のいずれかによって,パンデミックウイルスに変貌する。 1つは,遺伝子変異と自然選択と言う通常の進化の道筋によって,ヒト細胞を効率よく攻撃できるウイルス株が生まれる道筋(ピンク色の矢印)。 もう1つは(黄色い矢印),2種類のウイルス株が同一細胞に感染するケースで(a),細胞内でRNAが複製し(b),2種類のウイルス株から放出されたRNAが細胞内で混合して遺伝子の "再集合" を起こし(c),より感染力の強いウイルス株(d)を生み出す。W.WAYT GIBBS(TIMELINE);ALICE Y.CHEN(ILLUSTRATION)

 米国には高度なインフルエンザ監視システムがあり,インフルエンザと見られる通院患者や呼吸器系疾患による死亡者,公衆衛生機関で確認されたインフルエンザウイルス株に関する情報は,すべてアトランタにある疾病対策センター(CDC)に送られる。 「しかし,このシステムと言えども,鳥インフルエンザの管理に必要な隔離・検疫措置を講じるには不十分だ」」 とガーバーディング(Julie L. Gerberding)所長は2004年2月の会議で述べた。「そこで現在は,臨床医と獣医のネットワークを拡大しようと努めている」。
 CDCインフルエンザ部門の栗も不(Alexander Klimov)によると,H5N1の流行があったアジア諸国からの米国への旅行者で,インフルエンザと見られる重篤な症状を示した患者が数十例あり,その検査材料がCDCに急送されたそうだ。 「H5N1感染の有無は入院から40時間以内に判断できる。さらに6時間で血球凝集素遺伝子の配列が分析できるので,これによって問題のウイルス株の感染性を推定可能」 と言う。ウイルスは血球凝集素を使って宿主の細胞内に侵入する抜け道を探るのだ。 その後2日にわたる検査でそのウイルスの抗ウイルス薬耐性を突き止められるという。
 次のパンデミックは米国を含め世界のどこで起こっても不思議ではない。しかし,専門家の予測では,毎年のインフルエンザ流行と同様,アジアで最初に出現する可能性が一番高いようだ。 アヒルやガチョウなどの水鳥はインフルエンザの自然宿主だが,アジアではこうした家禽と雑居に近い状態で暮らしている人々も多い。 WHOやCDCなどの期間が徐々に援助を進めているものの,そうした地域のサーベイランス体制はいまだに点の段階で,不十分だ。
 インドネシアでのH5N1の感染拡大は,問題点と改善点を浮き彫りにしている。 2005年6月末,ジャカルタ郊外の比較的裕福な住宅地に住む自治体監査役の8歳になる娘が発病した。 意志は抗生物質を投与したが,症状は悪化の一途をたどり,6月28日に入院,その1週間後,少女の父親と1歳の妹も,発熱と咳のために入院した。 妹は7月9日,父親は7月12日に死亡した。
 翌13日,一人の優れた医師が保健当局に警告を発すると同時に,血液と組織のサンプルをジャカルタにある米海軍医療研究所に送付した。 少女は7月14日に死亡したが,内部報告書によれば,まさにこの日,同研究に勤務するインドネシア人の検査技師が,その家族3人のうち2人がH5N1インフルエンザに感染していたことを突き止めた。 ところが,インドネシア政府がこの事実を認めたのは,7月22日に香港のWHO強力研究機関がH5N1ウイルスを分離確認した後だった。
 ようやく重い腰を上げたインドネシア保健省は,さらに多くのインフルエンザ患者を病院に受け入れられるよう体制を整え,保健省疾病対策環境保健局長カンドゥン(I.Nyoman Kandun)はWHOのスタッフに感染拡大に関する調査の支援要請をした。 もし,このケースがパンデミックに発展していたとすると,30日以内という封じ込めの期間を過ぎていたことになる。 カンドゥンは2週間後に調査中止を宣言した。 「この患者たちが感染していたことを示す手がかりは発見できなかった」 というのが彼の言い分だ。
 現地の慣習のため,3人の犠牲者の検死解剖はかなわなかった。 WHOの世界インフルエンザ計画のたんとうせきにんしゃであるシュトール(Klaus St&oumraut;hr)は,ヒトH5N1症例の剖検がほとんどおこなわれていないために多くの疑問が解明されぬままになっていると訴える。 H5N1が最初に感染するのはどの臓器か? 免疫系の反応のスピードは?
 ウイルス学者もまた,渡り鳥がインフルエンザの拡大にどのていどの役割を果たしているのか,情報があまりに少なすぎることに気をもんでいる。 7月にはシベリアでH5N1に感染した家禽が確認され,次いで中央ロシアとカザフスタンにも飛び火した。 これらの家禽がどのような経路で感染に至ったかは今もって謎のままだ。
 答えの見つからない疑問が山積していることに業を煮やしたシュトールらインフルエンザ科学者たちは,パンデミックへの備えを指導する目的で国を越えて活動できる国際対策本部を設置するよう強く求めている。 またOIEは8月に,FAOおよびWHOと共同で推進しているサーベイランス計画への資金援助増額を訴えている。
 「ウイルスの検出能力を高めなければならないのは明白だ」。 米保健社会福祉省全国予防接種計画局長として米国パンデミック準備計画に携わるゲリン(Bruce G.Gellin)は言う。 「こうした国々への資金援助が必要なのは,ひいてはそれが我が身を救うことになるからだ」。

ワクチン:いつできる? 予防接種の優先順位は?

 かつて天然痘とポリオはパンデミックを引き起こし人類を思うがままに蹂躙したが,予防接種の普及によって,今や消滅寸前まで衰退している。 しかし残念ながら,ワクチン技術に画期的な進歩でもない限り,インフルエンザにはその手は効かない。
 実際,いまパンデミックが始まってしまったら,新型ウイルス株に対するワクチンの生産には時間がかかるうえ,ひどい供給不足が怒ることは目に見えている。 生物学的側面,経済情勢,現状に甘んじる姿勢だとすべてがこの問題に関わってくる。
 インフルエンザウイルス株は多種類が同時に循環し,それぞれが絶えず変化を続ける。 「ワクチンと病原ウイルスの一致度が高いほど,免疫系は問題のウイルスに対してしっかり防御することができる」 とゲリンは説明する。 そのため,メーカーは毎年,流行の危険性の最も高いウイルス株3種に対してワクチンを製造している。
 新型インフルエンザのワクチンを作る際には,まず生物学者がウイルス株を分離し,リバースジェネティクス法というプロセスでこれに手を加えて種ウイルスを作り出す。 その後,ワクチン工場で,無菌状態で飼育された雌鶏が産んだ有精卵にロボットが種ウイルスを注入し,病原ウイルスを鶏卵内で大増殖させる。
 インフルエンザの予防接種用のワクチンは,ウイルスを科学的に処理し,抗原と呼ばれる重要なたんぱく質を抽出して製造する。 この抗原がヒト免疫系を刺激して,適切な抗体を作らせる。 注射するワクチンではなく,吸入するタイプもある。 感染しても発病はしないように解毒化した,生きているウイルスから作られるワクチンだ。 分離したウイルス株がバイアル瓶に入ったワクチンに姿を変えるまでには6カ月の時間を要する。


新しい抗インフルエンザ薬


現在の抗インフルエンザウイルス薬はウイルス表面のタンパク質を阻害する薬で,M2タンパク質を阻害するアマンタジン,ノイラミニダーゼを阻害するザナビル,オセルタミビルがある。 開発中の新薬数種はノイラミニダーゼ阻害薬の改良版だが,ウイルスの宿主細胞への侵入を遮断したり,細胞内に進入したウイルスの機能を妨害するなど斬新なアイデアも検討されている。
アプローチ
薬物
利点
開発状況

ウイルスが1つの細胞から別の細胞に乗り移るために使うノイラミニターゼというタンパク質を阻害。
ベラビル(バイオクリスト)
CS-8958(三共/ビオタ)
ノイラミニダーゼ阻害薬は旧世代の抗ウイルス薬アマンタジンに比べて副作用が少なく,ウイルス耐性も生じにくい。 CS-8958は肺内に最高1週間はとどまる長期作用型。
ペラミビル錠剤は臨床試験では肺への到達が不良。 静脈注射薬の臨床試験は2006年に実施予定。 CS-8958の初期安全性試験は完了。


ウイルスの細胞への付着を妨げる。
フルダーゼ(ネックスバイオ)
ウイルスが宿主細胞に侵入する時に結合するシアル酸受容体を遮断。 すべてのインフルエンザウイルス株に等しく効果を発揮すると考えられる。
2006年に臨床試験を予定。


細胞のRNA干渉メカニズムを刺激。
G00101(ガレリア)
名称未定(アルナイラム)
DNAを利用して細胞の固有防御メカニズムを活性化し,ウイルスの自己破壊のプログラムを作動させる。 G001498を用いたマウスの試験では,鳥インフルエンザH5およびH7に対する有効性が認められた。
1年半以内に臨床試験を予定。


アンチセンスDNAでウイルス遺伝子を遮断。
Neugene(AVIバイオファーマ)
合成DNA鎖が宿主細胞にウイルスコピーの作成を命じるウイルスRNAに結合。 この戦略は大半のウイルス株に有効と考えられる。
2006年中に動物試験を予定。



by bucmacoto | 2006-05-15 01:35 | quote/data | Comments(0)
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