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- 北の空からみなみへ -
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せつなさ八景(習作)
2007年 07月 22日
遊びつかれて、それでももっとまだまだ遊んでいたかった子供の頃に
見上げた夕空は、雲とだいだいの光が面白いばかり
そこに せつなさ なんて感じてはいなかった。

少年の日の蒸し暑い夏の夕暮れに
Radioから流れる音楽はところどころで受信が悪くなり
少しばかりイライラとした感覚を伴いながら
せつない情景を脳裏に描きながら耳をくすぐった。

幸せなら手を叩こう♪
祭りの後に忍び寄る寂しさは
いとこ達との楽しいひと時が突然に終わるのに似て
ぽっかりと間延びした空白が耳と心に空いたようだった。

きのうまでそこに居たその席が空っぽだから
ぼくは何度もその席の見えない主を振り返りながら
声も顔も思い出せずにいながら
彼の雰囲気だけを空気に残る匂わぬ香りに感じていた。

帰宅すると予期せぬ留守宅
家の中に入る術すら思い出せぬまま
遊びにでかける気にもなれないままで
ゆるやかに確実に薄暗くなりゆく空を眺めていた。

悲しみと哀しみとの区別もつかぬままに
文字の中に行の合間にせつなさをさがして
百科事典の絵画の色彩に見分けられぬのに目を凝らし
ぼくは自分がけっして渋さや侘しさを理解できぬことを悟った。

剣道の試合の朝には到底無理な勝利を夢見て
3試合目の始まる頃にはよくて引き分けの情けなさをはや味わい
帰りのバスの中で汗臭くなった体としょっぱくなった皮膚を抱えて
べっとりとなった髪の毛を窓からの風に冷やしてクールさを装った。

失恋のくやしさは味わいぬいたのに
初恋のせつなさはもう思い出せないまま
英語と同じくらいに苦手な恋愛という科目を
履修放棄しながらそれでも憧れを捨てられないままに。

約束もなかった
明言もされなかった
それでも信じてみようと
そして思いはすれ違った。

音と音の隙間が寂しさを醸し出すのだから
拍手と歓声の突然すぎる途絶えは静けさを強調するから
甘美な夢と塩辛いうつつとの間を注意深く感じることから手を引き
目に見えぬ静寂の味を手元に引き寄せることを諦めたならば
もしかしたらこのせつなさと手を切れるだろうか
もしかしたらあのせつない塩の酸味が薄れるだろうか

生のWhiskyをかっこいいのだと勘違いした若き日に
生々しい軋轢と葛藤に自分ばかりが溺れていた夜に
縮んだり沈んだりしてばかりだというその思い上りに

静かに水を差しながら微笑む胸にせつなさ宿れり




見果てぬ遠き情景を 想うからせつない
目の前に見えながら 手が届かないもどかしさもまたせつない
手に触れながら 抱きしめられなくて切ない
抱き抱えこんでいたはずのものが いつの間にこの手を離れたのか

繋がりたくてせつなくて 離れ難くて切なくて

せつなさは思いを断ち切れぬから 切なくて

ほんの刹那を 永遠となさんとするは せつなさの性質というものなのかもしれない


一瞬の波のうねりのように 固い岩を打つ激しき波浪のように
時を固めて 時を刻んで 味わうことにて せつなさ深まれり

post at 2007.07/22
last edit at 2007.08/4

by bucmacoto | 2007-07-22 23:28 | wave
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